創業明治十年 東海製蝋
社員語録
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2020年01月29日の日記
荒ぶる
毎年、大学ラグビーの対抗戦を見に行くのを楽しみにしている。例年は、直前でも自由席は十分余っており、チケットを取るのに苦労などしたことはなかったが、今年はどうも様子がちがう。ワールドカップの盛り上がりがまだまだ続き、早明戦のチケットは早々に完売。秩父宮の臨場感を感じ、ビールを飲みながら...は叶わず、やむなく息子と二人でテレビ観戦とあいなった。ご覧になった方も多いと思うのだが、前半こそ早稲田も善戦したものの、後半は明治のフォワードに圧倒的な力の差を見せられ、10対50と大敗。二人でがっくりと肩を落とした。
それでも選手権に駒を進めたのだからと、一縷の望みを託し、決勝戦のチケットをとろうと思ったところ、こちらも予想をはるかに上回る厳しさ。決勝戦は、新しい国立競技場での開催。60,000人も入るのだからと高をくくったが、すぐに認識の甘さに気づかされる。ファンクラブ会員の優先予約にもかかわらず、発売開始15分で指定席はすべて売り切れた。何とか自由席を2枚確保するも、あまりの人気ぶりに心底驚いた。
国立が埋まるという。35年前、慶応の若林選手が活躍する慶早戦を、父と一緒に観戦した時のことを思い出した。観戦席へ抜けるゲートをくぐった時、60,000人の大観衆の地響きのような歓声に鳥肌が立った。今回、優勝までは望むまいが、早稲田フィフティーン。何とか決勝まで残ってはくれまいか。心の中でそう祈った。
決勝当日。快晴。早明戦。準決勝までの両校の試合から、明治の強さに圧倒されたが、とにかく観戦できる。2本の臙脂のフラッグをリュックに差し、新幹線に乗った。山手線。フラッグを持つ人。紺白のジャージーを着る人がどんどん乗り込んでくる。千駄ヶ谷駅は、大勢の人であふれ、その熱気にのぼせそうだった。小学4年生。こどもと少年の境にある息子の手を引き、東京体育館の横を抜けると、あの新国立競技場の美しい姿が目に飛び込んできた。血税で余計なものを作ってと批判的だったが、歴史に残るだろう建造美に、日本はやはり素晴らしいものを創るものだと心から感心したもつかの間、周囲を何重にも巻く人の列に言葉を失う。まだキックオフまで3時間ある。気を取り直し列に並び、牛歩、牛歩、蝸牛歩。エントランスを通過し、早歩きで右ゴールポスト斜め後ろ、2階席を確保。息を落ち着かせ、シートに座る。グリーンのグラウンドに差し込む、天井楕円空部からの太陽の光。あまりの美しさに息をのむ。ふんだんに使われた木材は、日本各地からの針葉樹だそう。素晴らしい。
早速ビールを求め、見つからないようにつまみに食べていた揚げたてハムカツはすぐに息子に奪われた。7割の明治ファンで埋め尽くされたスタンド。私の隣には、同年代のお父さんと、中学生のお嬢さんが座り、話の内容から早稲田ラグビー部OBの親子。お嬢さんにずっとやさしく展開やルールを説明していて、大変参考になった。正面の巨大モニターには、ロッカールームより出てくる選手たちが映し出され、グラウンドに。揺れるようなどよめきと割れんばかりの拍手が体の芯に響き、息子があっけにとられるようすがわかる。35年前、ラグビーの試合を始めて国立で見たあの時の自分を垣間見た。静まり返る場内、そしてキックオフ。前半、早稲田の圧倒的な攻撃に、後ろに陣取る明治OBのオジサン4人は、早くもやけ酒に移行した。まさかの展開に、息子も興奮気味。しかし、そのまま終わるわけがない。後半は、明治の真価を見せつけられる。一秒も無駄にしない気迫の猛追。はらはらどきどき。ワントライが命運を分ける。わせだ〜。息子が何度も大きな声で叫んでいる。ホーンが鳴り、ワンプレイ。最後まであきらめない明治の姿にも心を打たれる。敵陣から気づけば自陣に。ついにプレイは途切れ、ノーサイド。大学日本一になった時にしか歌われることのない荒ぶるを、生涯2度目に息子と聞いた。
対抗戦での敗北からおよそ40日。一体、どうしたらここまでの変化が起きるのであろうか。ミスがない。集中力。作戦。私にはわかるはずがないが、後日、斎藤キャプテンが早稲田にとって荒ぶるは何ですかという質問に、テレビでこう応えていた。荒ぶるは早稲田にとって使命です。早稲田ラグビーは勝たなければならない。勝つために何をすべきか。たった40日で、チームは変わる。
大興奮の息子は、帰宅すると祖父に、「よかったよ〜、じいじ」と言ったそうだ。大切な思い出の一つとして、息子の心に生き続ければいいと思うのだが。
妻から、テレビ録画を観るように促されると、試合前にビールを飲む私と、一心不乱に携帯ゲームにふける息子の姿が映っていたのはご愛敬。
2020年01月29日(水)
No.232
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