創業明治十年 東海製蝋
社員語録
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2006年03月01日の日記
幽玄の灯
先日、桜祭りの始まった伊豆へ妻と二人で大塚亮治面展を観に行ってきました。正直なところ能面になど全く興味の無かった私は展示会場となっている老舗旅館のランチにつられて運転手を引き受けただけだったのですが・・・・
昭和初期に建てられたという旅館の、迷路のような廊下を延々と案内された先で「面の宴」が私達を迎えてくれました。
洋画展などでは、いくつか観て回るうちに徐々にその世界に引き込まれることが多いのですが「会場に一歩足を踏み入れたとたん」という表現はこのような時使うのだと私は初めて思いました。
部屋に漂う凛とした空気が廊下とはっきり違います。まさにこれが日本の幽玄の華と評される所以でしょう。能面を目の当たりにすると、身の引き締まるような、心が透き通るような不思議な感覚に包まれていくのを感じます。
能面は一見無表情に見え、あいまいな顔立ちをしています。よく、無表情な人を「能面のよう」と表現することがありますが、むしろ能面は喜怒哀楽がはっきりしない「中間表情」であるがゆえ、ほんの少しの動作によってあらゆる表情が可能になる「無限表情」でもあるのです。
能面の中では誰もが知っている「般若」の面を始め、乙女の表情をたたえた「小面(こおもて)」や「姥(うば)」「翁」など、なじみの面も角度や方向を変えてじっくり観てみると様々に語りかけてきます。同じ役の面を同じ型紙で打っても作者によって表情に違いがあるのを見比べてみるのも楽しそうです。
世阿弥の「風姿花伝」にある、聖徳太子が秦河勝(はたのかわかつ)に六十六の面を与えて芸能を演じさせたといわれる言い伝えは、単に歴史の重みだけでなく、仮面ゆえにその神秘性を失わず現代までその精神と芸術性が融和し、人々の心に訴え続けるものがあると思いました。人はハダカのままでは恥ずかしく、常に神の前では豊作祈願の儀式の時もそうだが仮面を付け舞を奉納する。それにより、更なる力が宿ると信じられている訳です。人間は昔から面にはそういう不思議な力を感じていたに違いありません。
私はローソク会社に勤めているのですが、能面を観て回るうち、この幽玄の世界に一番似合う光は“ローソクの灯”しかないな、と感じました。防災の関係上、会場は和紙を使ったライトアップとなっていましたが、“ローソクの灯”の中で能面を観てみたい気持ちでいっぱいでした。きっと私たちをさらに幽玄で神秘な世界へ誘ってくれるに違いない事でしょう。来年の開催を楽しみに現地を後にしました。
2006年03月01日(水)
No.70
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