創業明治十年 東海製蝋
社員語録
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2003年06月20日の日記
リリィな時間
本日の出張は滅多にない日帰りである。まだ朝の内なのに、初夏には早すぎる日差しは強烈で「さ〜て、今日もやったるでぇ」と意気込みながらも、次の瞬間には「もうあきまへん。一風呂浴びてぇ」と尻込んでしまいそうなほどだった。
先輩から譲り受けたバンに付いている唯一の贅沢品であるAMラジオから、今日の暑さが如何に異常なものであるかを力説する売れない芸人の声を聞くと、私はおもむろに手動開閉機に手を掛けて一気に窓を開放し、それまで全開していたエアコンのスイッチを切った。
昨夜、私はまだ肌寒い夜風が運ぶ夏草の匂いから灼熱の日の到来をしっかりと感じていたのだ。普段は、もう決して朝まで昇降をしたくないと思うほど長い階段を2段抜きに駆け降りて、憑かれたようにコンビニへ向かった。冷蔵庫から両腕にやっと抱えられるほどのアレを持ちレジへ。漂う凛々しさのせいか、うっすらと額を濡らす汗がセクシーだったのか「1940円です。おじさま、佐藤浩市にそっくりッ」と目を潤ませる店員。「いつものことだ」と心でほくそみ笑いながらも聞こえぬ振りで財布をまさぐるが、無いッ。かくして間抜けな色男はあの4階までの地獄の階段を兎の如く往復したのです。
気の抜けない商談と尋常ではない車内の熱気の繰り返しで、ついには遠ざかる意識。極寒の地でただひたすらに待っているアレのことを思い私は喉を鳴らす。窓から吹き込むどよどよした風、首筋を伝うじっとりとした汗、信号待ちのちょっとイカしたスポーツカーから流れる音楽も、全てが今宵の儀式のエピローグだ。
最後の得意先を出る頃には、あれほどまで頑なに自己主張をしていた太陽も力を弱め、熱せられた大気もようやく夕方の冷気に変わろうとしている。西の山々に沈みかけるやや橙色を帯びた夕陽を右目に感じながら一日を反芻する。「俺は、今日がんばったけどー」会社の皆の顔が次々浮かぶ。同時に体内水分枯渇量をさりげなく確認している。「今日はジュース飲んでません。今日は空調入れてません。」今もけなげに私の帰りを待っているアレを思うと胸が張り裂けられるように切ない。
私の部屋は高台のアパートの最上階で小さなベランダが付いています。昼は額縁代わりの窓に富士山の全貌が浮かび、日暮れには100万ドルの夜景が広がる。私は妻の顰蹙をかったが、そこにおもちゃのテーブルとイスを設置しました。
車を降りた私は階段を形振り構わぬ短距離走のように駆け昇る。そして、一目散に冷蔵庫へ。何の前触れもなく荒々しく捕まれたアレは恥ずかしそうに身を捩り、うっすらと汗を滲ませている。
「プシュッ!」男のロマンはこの音から始まる。おもちゃのイスに大きな体を沈め、一気に飲み干す。まだ風にはかすかな熱気が残っている。2本目を飲み終えた頃、ビールを片手に風呂上がりの妻が登場する。
どれほどの時間が過ぎただろうか、気が付くと宵闇。おもちゃのテーブルにリリィが灯っている。花心の光が花びらを透し、やさしくこぼれる。見慣れたはずの互いの顔がぼんやりと浮かぶ。こんなリリィの時間、如何ですか?
*「リリィ」は当社のローソクです。今夏は姉妹品「フルール」が新発売されます。詳しくはホームページをご覧ください。
2003年06月20日(金)
No.39
(クルーT.A)
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