創業明治十年 東海製蝋
社員語録
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2000年10月16日の日記
ボランティアという自立
「タングルウッドのお年寄り」を前回書いた。マサチュウセッツ州の小さな町のお年寄り達がコンサートホールやミュージアムでのボランティア活動を通じて誇り高く自立している話しだ。
先日、阿部夏丸の「泣けない魚たち」が読みたくて市立図書館へ行った。初めて読む作家だったのでとりあえずコンピュータで検索をしたが、棚のロケーションが分からず側にいた係の方に教えていただいた。
慣れないと見たのか親切に本のある場所まで案内してくださった。60をとうに過ぎたであろうか、ほんの二言三言交わしただけだったが物腰にえも言われる優しさがあり、それがしっかりとした実力に基づいているものであること、そして何より本が好きでたまらないといった風情を漂わせているのが直ぐに分かった。私は瞬時にタングルウッドのお年寄りを思い出し、本当に本好きな市民達のボランティアで図書館の運営ができないものだろうかと考えてみた。
すばらしい図書館に恵まれて今年の夏休みも沢山の本好きの子供達が来館していたが、一人静かに読書を楽しんでいる白髪の方々も結構いらっしゃる。
私自身の退役後をシュミレートしてみる。若い頃歩いた山々を再び歩いてみたい。気の合った仲間との麻雀三昧。俳句や畑も真面目にやってみたい。たまには奥方の好きな温泉にもお付き合いすべきだろうし、孫との交流も人生に与えられた至福のひとつに違いない……。次々と襲いくる嵐の中で小さな船の舵取りを懸命にやってきた58歳にとって、わくわくするほど待ち遠しい近未来だ。
しかし、これらの自己の楽しみのレベルだけの毎日に本当の幸せがあるのだろうか。生きる充実感と心からの満足を得られるのだろうか。狭い自己中心的な楽しみの継続の先には精気の喪失という老いが確実に待っている。人が元気で生きられる源は「世の中からあてにされている存在である」実感だろう。それが彼地のボランティアの誇り高きお年寄りを支えている生き甲斐であり、本物のゆとりなのだ。
市当局は、リタィアした市民にボランティアとして図書館や体育館などの運営に積極的に参加してもらえるシステムを作ったらどうだろうか。本好きやスポーツ好きの元気印はいたる所にいるし、通過点として働いている無気力な吏員がいるとすれば遥かにアクティブで適材だ。
一方、市民サイドでも「今まで自分がさんざん払い込んだ年金を回収しているんだ」との考えから「今自分が年金をもらえるのは若い人達が一生懸命働いてくれているおかげだから」と変えてみる。この小さな意識変革は市民ボランティアへの大きな自立の出発点となるだろう。両者でこれができれば、自立した年寄りの医療費は大幅に減るだろうし、行政費用のスリム化も間違いなく実現できるはずだ。それに何より、いつまでも市民が元気で誇り高く生活できる社会、教えを受ける子供達がお年寄りを敬い共生する環境も生まれてくるだろう。「年寄りをあてにする町。一人が一つのボランティア…」なんてキャッチフレーズも案外洒落ているのかもしれない。
21世紀の高齢化社会を目前に、この拙文が市民の皆さんの自立ある老後を考える端緒となれば幸いです。
2000年10月16日(月)
No.5
(船長)
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