創業明治十年 東海製蝋
社員語録
[TOP]
2000年08月20日の日記
タングルウッドのお年寄り
ボストンから高速道路で2時間半、鬱蒼とした森の中にタングルウッドという小さな街が息づいている。クラシック音楽の同好者の間ではボストンフィルにの常任指揮者である小澤征爾の住む街としてつとに有名だが、ここに彼の栄誉と貢献を称えて建造された記念音楽堂がある。
ゴルフコースなら9ホールもあろうかと思われる一面の芝生の広がりの中に楢や胡桃、メタセコイヤの大木が深い影を落とし、長く伸びた枝先にはりすが遊んでいる。
開演2時間前にはすでに思い思いの服を身に纏った大勢の人が木陰でサンドウィッチやビールを楽しんでいた。入口壁面のレリーフには建造のための寄付をした大企業の名前が刻まれているが、それらに混じって「ミスター&ミセス」として夫婦の名前がいくつかあるのが目を引いた。
オペラハウスのミニ版のような建物は木の香が心地よい三階建、三方は客席だが演奏席から見た正面は芝生席に開放されていて、ここではローンチケットの家族連れや恋人達が裸になったり寝そべったり、自由な姿勢で演奏を楽しめる仕掛けだ。
ここでチケットの販売や観客の誘導をはじめ、会場を仕切っているのは70才前後のお年寄りであった。男は純白のブレザーに揃いのタイを締め、女の人もまた揃いのレースのツーピースのブラウスを見事に着こなしている。彼らの指示は細にわたり時として煩わしいほどだが、いつも威厳に満ちて絶対的だ。しばらく眺めていると彼らがボランティアであり、誇りと生き甲斐を持ってこの仕事に取り組んでいることが直ぐに分かった。そして、それらを暖かく容認して従う市民達。休み時間にはバリアフリーの館内を数台の車椅子が静かに走っていました。
帰路、近郊にあるノーマンロックウェルの美術館に立ち寄りました。街道からほんの少し入った小高い丘の上に、大きく羽根を広げて舞い下りたばかりの白鳥のような真っ白なミュージアムが横たわっています。誰もが一目見ただけで子供の日の心に帰ってしまうロックウェルの絵を、アメリカの誇りとして自信たっぷりに語ってくれた偉丈夫も、ロックウェルの再現されたアトリエで私を日本人と知り、優しくゆっくりとした英語で説明をしてくれた金髪の婦人もボランティアの素敵なお年寄りでした。
小さな街の広大な森に抱かれた音楽堂、サンディズベストを着て朝からコンサートを楽しむ家族連れ、そしてボランティアを生き甲斐とする堂々たるお年寄り達と、それを暖かく受け入れるコンセンサス………。
幾重にも連なる緑の丘が紺碧の空に溶け込んでいく夢のように美しいミュージアムの庭に佇みながら、私はこの国の豊かに成熟した大人の世界を垣間見たような気持ちで、いつしか我が岳麓の緑なす草原と、すぐそこまで来ている自分の老後のありように思いを馳せていました。
2000年08月20日(日)
No.4
(船長)
No.
PASS
OR
AND
スペースで区切って複数指定可能
<<
2000年08月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
2000年08月20日(日)
タングルウッドのお年..
HOME
[Admin]
[TOP]
shiromuku(fs4)DIARY
version 3.44
〒418-0034 静岡県富士宮市黒田355-1 TEL 0544(27)2637 FAX 0544(24)5360