創業明治十年 東海製蝋
社員語録
[TOP]
2000年02月01日の日記
キャディの矜持
私たちの会社では、年頭に、目標とすべきキーワードについて、全員で話し合うことを恒例としています。今年のそれは「矜持」でした。広辞苑では、「実力に裏付けられた誇り」の意とありますが、「いつも楽しく仕事をしよう。それには奥底に誇りを持とう。そのためには、他に追随されない商品力と品質管理が必須だ。感謝の心を持ち、謙虚に勉強していこう」と結論らしきものがでました。
1月中旬の日曜日、友人に誘われて、御殿場のTコースに行きました。ここは毎年、男子プロの試合が行われている本格的なチャンピオンコースです。キャディさんの「今日1日ご一緒させていただきます○○と申します」と型通りの挨拶にも、心からのウェルカムが滲み出ていて、教育が徹底していることを窺えます。50代半ばだろうか。開場以来勤務して23年になること。ゴルフが好きで好きで、毎日出勤してくるのが楽しくて仕方ない、と話してくれました。キャディの仕事は、通常4人のゴルファーを一人で担当。それぞれの状況の異なるプレーヤーの次の動きを予測して行動しなければならないので、即座の要領や機転が資質として要求されます。
4、5ホールを回ったでしょうか?実に心地よい流れでプレーが進行していました。そして、それが彼女の寸分も無駄のない動きに起因しているものであることに、私も友人も無言のうちに気がついていました。「このショートは回りの景色で短く見えますが、距離はしっかりあります。グリーンの奥行きも見た目以上ですから、表示のヤードで大丈夫です」と距離のアドバイスは誠に的確だ。「このグリーンはあまり曲がりません。カップを外さず、内側でお願いします」と、グリーンキーパーのメンテナンスに絶対の自信がなければ言えない台詞を堂々と言ってくる。そして、ボールはその通りに転がった。
あるミドルホールでのこと。私は右のフェアウェイバンカーに捕まり、他の三人は左サイドのラフ、キャディは一緒にボールを探しています。私がボールを打ち、バンカーならしで砂を慣らして出ようとした時のことです。間髪を入れずに「バンカーをありがとうございますッ」という大声が背中を襲ったのです。私はびっくりしました。何故なら、40ヤードも離れた位置で、他のボールを探しながら私の行動を眼の端で見ていたことになるからです。そして、絶妙のタイミングで声をかけてきたのです。実は、私は前のホールでもバンカーに入れましたが、このときは入口の近くであったせいもあり、靴底で慣らして出ていました。
私は瞬間的に、彼女のこの「ありがとう」の一声は「いつも、今回のようにバンカーをきれいに慣らしてください。私が行けない時は、これからも宜しく…」というメッセージであることに気づかされたのでした。そして、4人のプレーヤーの面倒を同時にみることの不可能を前提に、この一声は他の3人への同様のメッセージでもあったのです。
爽やかな風が私の心を吹き抜けました。凛とした一線を保ちながらも機微のある対応は、仕事へのポジティブな取り組みと、謙虚に学ぶ姿勢から培ったものでしょう。そして、揺るぎ無い自信とスタッフである仲間への絶対的信頼に基づいた誇りなど。私が彼女に見たものは、正に「矜持」そのものであったのです。
「今度は夏にお出でください。素晴らしいコンディションですから…」と微笑む彼女は輝いて見えました。2度と会うこともないだろう。しかし、私はこのキャディさんとの出逢いを一生忘れることなく、いろんな局面で思い出すに違いありません。人生の貴重な師の一人として……。
2000年02月01日(火)
No.2
(船長)
No.
PASS
OR
AND
スペースで区切って複数指定可能
<<
2000年02月
>>
日
月
火
水
木
金
土
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
2000年02月01日(火)
キャディの矜持
HOME
[Admin]
[TOP]
shiromuku(fs4)DIARY
version 3.44
〒418-0034 静岡県富士宮市黒田355-1 TEL 0544(27)2637 FAX 0544(24)5360